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TECHNOLOGICAL CAPABILITY

プロペラ及びラダープレートへの防汚塗装とその効果

船舶とプロペラ

船体を動かすためにはエンジンの出力を水中で推進力に変換する必要があります。プロペラはまさに推進力を生み出す源であり、直径約15cm程度の小型船用から、直径10mを超える大型商船向けのプロペラまで各船種に適した大きさ・形のものが存在します。

大型船向けプロペラ

小型船向けプロペラ

プロペラの汚損と船舶性能への影響

プロペラは運航中常時回転し推進力を生みだしていますが、運航中は海洋生物による汚損のリスクが低くまた洗浄も比較的容易であることから、従来プロペラは無塗装での設置が主流となっていました。しかしながら、長期停泊時にはプロペラの稼働も停止することから、フジツボなどによる汚損が進行します。これによりプロペラ抵抗が増加し、推進効率や燃費の悪化を招くことが懸念されています。

清浄なプロペラの場合

汚損したプロペラの場合

海上公試によるプロペラ性能の評価

プロペラ汚損が船舶性能に与える影響を評価した結果を次に示します。本船は大阪湾内湾に係留されている練習船であり、一般的な商船と比較して、稼働率が極めて低く、かつ汚損リスクが高い環境に置かれています。
夏季研究航海の直前に実施した水中ドローン調査では、当社製品の低燃費防汚塗料シープレミア3000PLUSを塗装した船体への汚損はみられなかったものの、可変ピッチプロペラの防汚塗料の非塗装部を中心に添付のような汚損が発生していることが確認されました。

無塗装による汚損後のプロペラ

プロペラシャフト

プロペラ圧力面

プロペラ負圧面

船体船尾部

下図に示す通り、夏季研究航海の海上公試時の馬力増加率(PIR)は船速12knotsにおいて39%近くに達し、最高出力での試験の断念を余儀なくされました。その後、プロペラの汚損以外に船舶性能の悪化要因が見当たらなかったことから、2025年10月8日にプロペラクリーニングおよび水中ドローン調査を行い、再度海上公試を行いました。

馬力増加率とクリーニングの頻度

その結果PIRは+5%程度まで回復しました。クリーニングのみで34%もの大幅な性能回復が見られた為、この改善分はプロペラ汚損の解消によるものと考えられます。これにより、プロペラへの生物付着が船舶性能にきわめて大きな影響を及ぼすことが実証されました。なお、添付画像の通り、プロペラ防汚塗装部では生物付着が抑制されており、付着物の洗浄も容易であることも確認されました。このことから、プロペラ塗装は汚損防止のみならず、メンテナンス(洗浄)を容易にする観点からも有用な手段であることが確認されました。

プロペラ圧力面(クリーニング後)

プロペラ負圧面(クリーニング後)

日本船舶海洋工学会春季講演会(2026年5月28日)
「多機能練習船を対象とした船体・プロペラ表面の生物汚損影響の評価」

上記のように、一度汚損が進行した無塗装のプロペラは、その後運航を再開した場合でも、クリーニングを行わない限りは、自然に海洋生物が脱離することが難しいケースもあり、長期停泊時も汚損を進行させない防汚塗装の需要が近年高まりつつあります。

当社のプロペラ向けシリコーン塗料は優れた平滑性・弾性・低表面自由エネルギーの3要素を持ち、海洋生物の難付着性と容易な脱離性を発現します。また、高速回転するプロペラに塗装しても塗膜の消耗がなく、良好な付着性を発揮する防汚塗料として注目されています。

無塗装プロペラの汚損

プロペラ向けシリコーン塗料適用後

(共に塗装後約30か月運航後の状態)

ラダープレートへの適用とキャビテーション対策

船体ラダープレートにおけるキャビテーションの発生機構と影響

プロペラの前方又は後方にはラダープレートと呼ばれる船の進行方向を操作するための舵板が取り付けられています。ラダープレートはプロペラから噴き出される高速の水流により「キャビテーション」と呼ばれる非常に浸食作用の強い現象が生じ、ひどいケースでは塗膜が崩壊し鋼板へダメージが生じることがあります。

キャビテーションによるダメージは塗膜硬度の高い塗膜よりも、柔軟で弾性のあるシリコーン塗膜の方が良好な耐性を持っていることが分かっており、ラダープレートへのキャビテーション対策としてもシリコーン塗膜は有効です。

ガラスフレーク入りエポキシ塗料+自己研磨型防汚塗料

プロペラ向けシリコーン塗料適用後

(共に塗装後約30か月運航後の状態)

塗膜のキャビテーション耐性に関する評価

下記写真は、キャビテーションを再現した試験結果です。非常に塗膜硬度の高いガラスフレーク入りエポキシ塗膜とプロペラ向けシリコーン塗膜との比較になります。塗膜硬度の高いガラスフレーク入りエポキシ塗膜はキャビテーションによる塗膜崩壊が生じていますが、プロペラ向けシリコーン塗膜は優れた弾性と付着性を発揮し、キャビテーションによる塗膜崩壊は生じない結果となりました。

キャビテーション試験装置(ASTM G32-06)

試験片(上部に塗装済)

試験後のガラスフレーク入りエポキシ塗膜

プロペラ向けシリコーン塗膜

シリコーン塗料はプロペラの汚損防止だけでなく、ラダープレートのキャビテーションによるダメージ防止にも非常に有効な塗装であることが本試験結果からも示唆され、現在ではラダープレート及びプロペラをシリコーン塗料で一括塗装することを推奨しております。

私たちの取り組み

当社のプロペラ向けシリコーン塗料は、平滑性・弾性・低表面自由エネルギーにより優れた防汚性を発揮し、船舶の燃費向上とGHG削減に繋がることを目指します。また、キャビテーション対策としてプロペラやラダープレートの保護を行い、船体の付加価値向上にも貢献できるようこれからも取り組んでいきたいと考えております。