サステナビリティ
TCFD提言に基づく情報開示
中国塗料(以下、当社)グループは、「気候変動」を重要な経営課題の一つとして認識しており、2023年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同を表明いたしました。
ガバナンス
当社グループの中長期的な企業価値向上の観点から、気候変動対策をはじめとするサステナビリティへの取り組みを強化するため、2022年6月よりサステナビリティ委員会を設置しております。同委員会は気候変動対応に関する最高責任者でもある代表取締役社長を委員長とし、執行役員や各本部長を中心に構成されており、サステナビリティに関する方針・目標・実行計画の策定、サステナビリティ課題に対する取り組み推進やモニタリング、マテリアリティ(重点課題)の特定を担っています。また、その内容を四半期に一回取締役会に報告しており、取締役会はサステナビリティ活動やKPIのモニタリングを行う仕組みとしています。
気候変動関連議題
サステナビリティ委員会においては気候変動に関して主に以下を議題としております。
- ・エネルギー関連目標の設定、結果の報告
- ・GHG排出量の削減目標の設定、結果の報告
- ・省エネ設備、再生可能エネルギーの導入の検討
- ・廃棄物の再資源化率目標の設定、結果の報告
- ・TCFD対応、気候変動リスク・機会に関する事項
気候関連課題に対するガバナンス体制図
戦略
当社グループは気候変動に伴って引き起こされる様々なリスク・機会を事業運営における重要な観点の一つとして捉えており、TCFD提言で示された各リスク・機会の項目を参考に、気候変動問題が当社に及ぼすリスク・機会に関して検討いたしました。また、気候変動シナリオを参考にしながら、パリ協定の目標である「1.5℃~2℃シナリオ」と、現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した「4℃シナリオ」の2つの温度帯のシナリオを用いて、特定したリスク・機会に関してシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析について
下記の4つのステップを通してシナリオ分析を実施いたしました。また、気候変動のシナリオについては脱炭素社会に向かう1.5℃~2℃シナリオと、温暖化が進行する4℃シナリオを選択し、各リスク、機会について分析、評価した後に対応策の検討を実施いたしました。
分析のプロセス
1.5℃~2℃シナリオ
気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、世界の平均気温を産業革命期以前と比較して1.5℃~2℃未満に抑えることを目指したシナリオ。1.5℃シナリオでは、移行リスクの中でも政策・法規制リスクの影響が2℃シナリオに比べて大きくなると想定されている。
<参考にしたシナリオ>
- ・IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario
- ・IPCC SSP1-2.6
4℃シナリオ
気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末頃に約4℃上昇するとされるシナリオ。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定されている。
<参考にしたシナリオ>
- ・IPCC SSP5-8.5
当社グループにおける気候関連リスク・機会の概要
気候変動シナリオをもとに当社グループの事業に与えるリスク・機会に関して、重要リスク・機会として以下のとおり抽出しました。リスク・機会の検討期間としては、短期を中期経営計画の実行期間である2025年度まで、中期を2030年度まで、長期を2050年度までと位置付けました。
1.5℃~2℃シナリオにおける世界観としては、脱炭素政策が強化され、炭素税の導入による費用負担の増加や原材料価格の高騰、化石燃料の運搬船の台数減少による船舶用塗料の需要減少等のリスクが考えられますが、低燃費型防汚塗料などの環境配慮製品の需要増加や、浮体式洋上風力発電施設向けの塗料開発などの新たなビジネスチャンスも得られると認識しております。
4℃シナリオにおける世界観としては、気温上昇に伴う自然災害の頻発や激甚化、海水面上昇による物理的リスクが考えられますが、海水温度の上昇による船底防汚塗料の需要増加も生じると見込んでおります。
リスク/機会 | 分類 | 要因 | 事業への影響 | 財務影響 | 発生時期 | 当社の対応策 |
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移行 リスク |
政策・規制 |
炭素税導入・ 炭素税率の上昇 |
炭素税の負担コストの増加 | 中 | 中期 |
●再生可能エネルギーへの切り替え ●高効率機器の導入による省エネルギー化 |
電気料金コストの増加 | 中 | 短期~中期 | ||||
技術 | 低炭素原料への切り替え | 低炭素原料が求められるようになることによる調達リスク、コストの増加 | 中 | 短期~長期 |
●石油由来原料からバイオマス由来の化学物質への切り替え |
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市場 | 原材料価格の高騰 | 従来から使用している植物油類原材料の需要増に伴うコストの増加 | 中 | 短期~長期 |
●工場稼働率の向上 ●高付加価値製品の拡販 |
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海運業界の需要変化 | 化石燃料の運搬船の減少 | 中~大 | 長期 |
●次世代燃料運搬船用の塗料需要の開拓 ●プレジャーボート向けや重防食塗料等の他分野での拡販 |
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物理 リスク |
慢性 | 海面上昇 | 自社拠点移転に伴うコスト増加 | 大 | 長期 |
●リスクマッピングの実施による移転時期や移転場所の検討 ●BCP関連投資の促進 |
急性 | 自然災害の激甚化 | 急激な災害による事業拠点の操業度低下 | 大 | 短期~長期 |
●地域防災マップによる危険箇所の事前把握 ●水害を防ぐための土嚢・オイルフェンス・油吸着マットの配置 ●代替生産体制・計画の立案(グループ生産拠点、外部製造委託) |
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機会 | 資源の効率性 | 未利用資源の価値化 | 塗料容器や溶剤蒸留による再利用に伴う廃棄物処理コストの削減 | 小 | 短期~中期 |
●製造工程の見直し ●IBCタンクの活用 |
製品とサービス | 低排出量商品・サービス市場拡大 | 環境配慮製品の需要増加(低燃費型高性能船底防汚塗料、バイオマス塗料 等) | 大 | 中期 |
●当該製品に関する研究開発強化と顧客への積極提案 |
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市場 | 海運業界の需要変化 | 次世代燃料運搬船向け塗料の需要増加 | 中~大 | 中期~長期 |
●製品競争力の向上と営業活動の強化 |
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低炭素電源の拡大 | 洋上風力発電向け塗料の需要増加 | 小~中 | 中期 |
●各種規格に適合する製品の開発と市場展開 |
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その他 | 海水温度の上昇 | 汚損リスクを低減する高性能船底防汚塗料の需要増加 | 中 | 中期~長期 |
●当該製品に関する研究開発強化と顧客への積極提案 |
リスク軽減/機会実現に向けた取り組み状況
●再生可能エネルギー電力と省エネルギー設備の導入
当社グループでは、GHG排出量の削減を目指し、再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入をすすめております。再生可能エネルギーの導入としては、国内の研究開発拠点である広島本社や、オランダの子会社であるCHUGOKU PAINTS B.V.にて太陽光パネルを導入し、消費電力の再エネ化の向上をすすめております。また、今後は電力会社から購入する電力について徐々に再生可能エネルギー由来のものに切り替えていく方針です。省エネルギー設備の導入としては、九州工場において倉庫照明のLED化を実現いたしました。今後もエネルギーロス削減や再生可能エネルギーの利用拡大を推進していきます。
●船底防汚塗料による温室効果ガス排出削減
当社が製造販売する船舶用塗料の中核製品である船底防汚塗料は、船舶の運航中にフジツボ等の海洋生物が船底部に付着することによる表面抵抗の増大を防ぎ平滑性を保つことで船舶の燃費を改善させ、温室効果ガス(CO2)の排出削減に寄与しています。
海運業界では、気候変動対策として船舶の燃費やCO2排出に関する規制・ルールが制定され今後は強化されることが見込まれているほか、気候変動に伴う海水温の上昇や豪雨・台風等の気象変化により一部の海域では海洋生物が活性化し船底の汚損リスクが増大しております。このような環境変化に対応するため、より防汚性能が高く燃費改善効果に優れた高性能船底防汚塗料の需要が高まっており、今後も長期間にわたって需要拡大が継続するものと想定しております。
(点線内が高性能塗料、それ以外は一般塗料)
当社では、以前より高性能船底防汚塗料の開発に注力しており、ラインアップの充実と品質の向上を図ってまいりました。これらのことから、船 舶の気候変動対応は、今後の当社の船舶用塗料ビジネスにとって、高付加価値製品の売上増加を通じて業績拡大の大きな機会になるも のと認識しております。
リスク管理
気候関連のリスクを識別・評価するプロセス
当社グループでは、「リスク管理基本規定」を制定し、事業運営上において発生しうるあらゆるリスクの予防、発見、是正、及び再発防止に係る管理体制の整備と発生したリスクへの対応方針を示すことで円滑な経営を行うことを目的に、管理本部長を委員長とした「リスク管理委員会」を設置しております。
気候変動に伴うリスクについては、各部門または各専門部会で抽出された後、サステナビリティ委員会にて識別・評価を行います。そこで、リスク影響度、発生可能性に基づき固有リスクスコアを算出することでその重要性を判断し、重要度の高いリスクについてはリスク管理委員会、中~低レベルのリスクに関してはサステナビリティ委員会にて対応方針の検討を行います。
気候関連のリスクを管理するプロセス
リスク管理委員会及びサステナビリティ委員会にて対応方針を検討した後、年1回以上取締役会へ報告する体制としております。リスク対応策の実行プロセスとしては、担当本部、または専門部会が対応策を推進し、両委員会は常に対応状況をモニタリングしています。
全社のリスク管理への統合プロセス
リスク管理体制は、リスク管理委員会を機軸に、コンプライアンス委員会、システム企画・運用委員会等から構成され、発生しうるリスクの予防、発見、是正、再発防止に取り組むとともに、顕在化したリスクに対応する体制整備を進めています。気候変動リスクに関しては、リスク管理委員会及びサステナビリティ委員会の連携を通じ、全社的なリスクと同様のプロセスで管理され、統合的なリスク管理体制を構築しております。
指標と目標
気候関連問題が自社事業に及ぼす影響を評価するため、GHGプロトコルの基準に基づき温室効果ガス排出量の算定(Scope1、2、3)を実施しております。当社グループの温室効果ガスの削減目標については、基準年度を2021年とし、2030年にScope1、2において45%削減、2050年にはカーボンニュートラルを目指しています。
気候関連のリスクと機会を評価するために用いる指標と目標
指標 | 目標水準 |
---|---|
温室効果ガス排出量 Scope1、2 |
■2030年度CO2排出量45%削減 ■2050年:カーボンニュートラル |
温室効果ガス排出量の実績
●グループ全体の温室効果ガス排出量(Scope1、2、3)
年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|
CO2排出量 (t-CO2) |
Scope1 | 5,554 | 4,168 | 4,205 |
Scope2 | 14,965 | 12,134 | 10,668 | |
Scope3 | - | 597,894 | 762,617 |
※グループ全体でのScope3の集計は2022年度から
2021年度以降のScope1、2推移(グループ全体)
2022年度のScope1、2、3内訳
- ・環境省・経産省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量の算定に関するガイドライン」に基づき算出しています。
- ・Scope2排出量に関しては、マーケット基準にて算定しております。ただし、社会・環境報告書では基礎排出係数にて算定を実施していたため、上記排出量の 数値とは異なります。
- ・Scope3排出量に関しては、サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.2を用いて算定しております。