防汚塗料の防汚機構

船底防汚塗料は、塗膜の溶解機構の種類によって次の3種類に分類されています。

防汚塗料の防汚機構

船底防汚塗料は、塗膜の溶解機構の種類によって次の3種類に分類されています。

塗膜の溶解機構

船舶の運航環境や船の素材などに応じて多様な品種を開発しています。

加水分解型

加水分解型塗料は石鹸のように表面が溶けて更新されていくため、常に滑らかな塗膜表面を保ち、安定した防汚活性機能を持続することができるので、塗膜厚のコントロールによって長期にわたり高い防汚性能を発揮することができます。現在の船底防汚塗料の主流はこのタイプです。

  • 防汚塗料の塗膜には、加水分解樹脂(高分子ポリマー)と防汚剤が含まれています。

  • 海水中で加水分解して疎水性から親水性へと変化することによって塗膜表層から少しずつ溶解して防汚成分を徐放しつつ塗膜を更新することができます。

  • 塗膜表面を均一に更新することができるため、長期防汚性能を持続させることができます。

加水分解機構の一例

SEAFLO NEO CF Z (2017年5月発売)の加水分解機構

架橋型亜鉛ポリマーの加水分解反応は、TBTポリマーと同様に可逆反応です。そのためスムーズな加水分解反応を確保でき、優れた消耗持続性を発揮します。

  • スムーズな加水分解が行われない場合、塗膜表面に防汚剤の溶出を妨げる加水分解層が堆積します。

  • 新開発の架橋型亜鉛ポリマーは塗膜表面に形成される加水分解層が非常に薄く、防汚剤の溶出作用が常に最高の状態で保たれます。

水和分解型

水和分解型塗料は海水に対して親和性や微溶解性を持つ樹脂が用いられます。防汚剤が少しずつ溶け出し、海水の浸透によって形成される水和層が水流の力によって更新されます。加水分解型塗料と比較すると、長期防汚性能の点ではやや劣りますが、係留プレジャー艇や淡水、汽水域での使用にも適しています。近年では加水分解と水和分解のハイブリッドタイプも開発されています。

  • 一般的には水に親和性のある樹脂が用いられますが、加水分解型塗料のように樹脂が海水中で化学変化を起こしません。

  • 塗膜に水が浸透することで水和層を形成し、防汚剤が水中に徐放されます。

  • 水流(船の運航)によって水和層は溶解・研掃されます。水との親和により溶け出すので、海水・真水に関係なく溶出することが可能です。

シリコーン型

シリコーンゴムを主成分とし、防汚剤を含まなくても、シリコーン塗膜の持つ弾性、撥水性、平滑性によって、海洋生物が脱落しやすい難接着性を示す防汚塗料です。付着を不安定なものとすることで難接着性表面を実現しています。近年では、シリコーン系防汚塗料に微量の防汚剤を加え、防汚効果を大幅に向上させたタイプも上市されています。

  • 表面自由エネルギーを利用した撥水効果のある塗膜表面が汚れの付着を防ぎます。

  • シリコーン塗料の塗膜表面は海中生物が足を掛けられないほど平滑で、更に弾性があるためトランポリン効果で生物の付着を阻害します。

  • 付着した汚れや生物は船舶の航行による水流で簡単に流れ落ちます。

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